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Spring Has Come

Spring Has Come

後悔

小雨が降る中、迎えに来た夫の車に乗って退院。
車に乗り込む前に灰色の空を仰いだ。
この空のどこかに春歌はいるのだろうか。
柄でもないのに、そんなことを考えてみた。

家に戻ると、ベビーベッドやベビー服などは片付けられており、
まるで妊娠そのものが幻だったかのようだった。
それはそれでありがたかった。
もしベッドなどがそのままあったとしたら、私はどうなってしまっていただろう。

義母も夫も一週間近く仕事を休み、家事や子供たちの世話をやってくれた。
それもありがたかったのだが、思うように身体を動かせない歯がゆさに腹が立った。
私は一体どうしてゴロゴロ寝てばかりいるのだろう。
赤ん坊の世話をするわけでもないのに。
これじゃただの穀潰しじゃないのか?
どうして自分ばかりがのうのうと生きているんだろう。
上の子達の面倒も見られない。赤ん坊もまともに産めない。
最低な人間ではないか。

そんな風に悶々と過ごすうちに、ある後悔の念が日に日に大きくなっていくのを感じた。

何故、春歌のお骨をもらわなかったのだろう。

火葬場できちんと荼毘に付したのだから、
ごみ扱いはされずに、形だけでも供養してくれたとは思う。(そう願いたい)
でも・・・春歌は今頃どこかで泣いてないだろうか?
お骨を受け取らないなんて、私は鬼畜以下の親かも知れない。
いや、親と名乗る資格すらないかも知れない。

自分たちの選択は間違っていなかった、と必死で思い込もうとした。
しかし、もはや不可能だった。
私たちは取り返しのつかないことをしてしまったのだ。

せめて春歌の代わりに形あるものに祈りを捧げたいと考え、
暫くして小さな小さな仏壇を購入した。
春歌のために手を合わせる日々。
その後義母が亡くなった今では、二人のために手を合わせている。
私たち夫婦は決して信心深い方ではないが、
こうすることで少しでも春歌に気持ちが届くのならいいな、と思う。

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